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2008年02月26日 (火)
それでもしばらくぐるぐると周囲の状況を探して、でもやっぱり何もない部屋の中から話の種を拾い上げるのをあきらめる。目を伏せたまま顔だけを上げて、間を置くためにレモンソーダのペットを手元に引き寄せて一口飲んでみた。ふたを外したまましばらく放置されていたソーダは思ったほどしゅわしゅわしないけど、この際気にしない。さっきからずっとあたしに向けられていた、先生の何か言いたげな視線にわざと気付かないふりで休憩しながら一口ずつ飲む。半分くらいに軽くなったペットボトルをこつんと音を立ててテーブルに戻すと、その瞬間を見計らっていたように先生はお箸を持っていた右手をテーブルに置いた。
「なぁ、春奈」
「んー?」
呼ばれた声に応えるように、首をかしげて顔を上げて、先生に視線を流す。あたしと目が合うと、もぐもぐと口を動かしていた先生はごくっとのどを鳴らして口の中に残っていた食べ物を飲み込んで、そして真正面からこっちを見た。
「さっきの、話だけどな。おまえ、なんで昨日こなかったんだ?」
「えっ……」
ごまかしきったと安心していた話題をまた振られて、あたしは固まってしまった。どう答えていいかわからなくて、でも聞こえなかったふりもできなくて。テーブルに戻す前に止まった手が中途半端に空中で止まってしまう。硬直したままのあたしにちょっと眉をひそめると先生はむーと口の中でうなった。
「さっき変な感じに話途切れちまったけどよ、なんか気になんだよなー。特に理由がねーってんならそれはそれでいいよ。つまんない理由でもいいよ。とりあえず、言えよ」
「え、えーっと……」
普段の三割増くらいで砕けた、完全に友達相手みたいな口調にも反応することができない。徐々に距離を詰められると後ずさるみたいな感じに逃げられるけど、真正面から一気に懐に入られると、立ち止まっておろおろするだけ。言葉に詰まってうろたえるあたしに、先生は唇を尖らせてふうっと大きな溜息をついた。
「どうしても言いたくねーってんなら、それはそれでいいんだけどさ。やっぱ気になるわけよ、俺としては」
「え、あ、えー……」
そのあまりにも真面目な言葉に応えることができなくて、でも無視することもできなくて、その真摯な瞳からちょっとでも逃げようと、あたしはムダにパチパチとまばたきを繰り返した。
-つづく-
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