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2007年02月20日 (火)
「――理香」
ドアが開く音と同時に背後から掛かってきた笑みを含んだ低い声に、女子社員の制服であるチェックのベストスーツを着た小柄な身体が停止した。呼吸を止めて、まばたきを二回と深呼吸を一回、そしてゆっくりと顔を上げる。目の前に立つ相手を何度も見確かめた理香の口から、かすれた声が流れ出た。
「うそ……。亮治、先輩?」
「嘘とは失礼だな。どう見ても俺だろう」
茫然と呟いた言葉には嘲るような低い笑みが返ってくる。
「脚ならちゃんとあるぞ。幽霊じゃない」
濃グレイのスーツの長身がゆっくりと一歩を踏み出した。きれいに磨き上げられたビジネスシューズが威圧的な足取りで近付いてくる。理香は思わず後ずさったが、ソファセットと執務机にはさまれた狭い空間にいたことが災いした。逃げる暇もなく伸びてきた腕に捉まれる。強く圧し掛かってきた身体が理香をソファに押し付ける。ソファと亮治の身体に挟まれて身動きさえできなくなった耳元に、楽しそうな低い笑みが忍び込んだ。
「あれから四年……いや、五年か。全然変わらないな、おまえは」
「なんで、先輩がここに……」
怯えるような理香の問いかけに、亮治はおかしそうに笑った。
「逢いたかったよ、理香」
優しげな中に冷酷な色を残したまなざしがゆっくりと細められる。
「うそ、ばっかりっ」
「嘘なもんか。ずっとおまえのことを考えていた」
「やだ! あたし、もう先輩には騙されないっ、……ん、んっ」
噛み付くようなキスに理香の反抗が塞がれてしまう。慣れた手が腰へと回り、タイトスカート越しにふとももを撫で上げた。薄いブラウスの下でざわざわと鳥肌が立つ。それと同時に脳裏を走った甘い記憶から逃れようと、理香は必死で身をよじった。亮治の胸をひじで強く押し返し、暴力的なキスを終わらせる。五センチの距離で薄く笑う瞳を理香は睨みつけた。
「あのとき、あたしを捨てた、くせにっ!」
-つづく-
ドアが開く音と同時に背後から掛かってきた笑みを含んだ低い声に、女子社員の制服であるチェックのベストスーツを着た小柄な身体が停止した。呼吸を止めて、まばたきを二回と深呼吸を一回、そしてゆっくりと顔を上げる。目の前に立つ相手を何度も見確かめた理香の口から、かすれた声が流れ出た。
「うそ……。亮治、先輩?」
「嘘とは失礼だな。どう見ても俺だろう」
茫然と呟いた言葉には嘲るような低い笑みが返ってくる。
「脚ならちゃんとあるぞ。幽霊じゃない」
濃グレイのスーツの長身がゆっくりと一歩を踏み出した。きれいに磨き上げられたビジネスシューズが威圧的な足取りで近付いてくる。理香は思わず後ずさったが、ソファセットと執務机にはさまれた狭い空間にいたことが災いした。逃げる暇もなく伸びてきた腕に捉まれる。強く圧し掛かってきた身体が理香をソファに押し付ける。ソファと亮治の身体に挟まれて身動きさえできなくなった耳元に、楽しそうな低い笑みが忍び込んだ。
「あれから四年……いや、五年か。全然変わらないな、おまえは」
「なんで、先輩がここに……」
怯えるような理香の問いかけに、亮治はおかしそうに笑った。
「逢いたかったよ、理香」
優しげな中に冷酷な色を残したまなざしがゆっくりと細められる。
「うそ、ばっかりっ」
「嘘なもんか。ずっとおまえのことを考えていた」
「やだ! あたし、もう先輩には騙されないっ、……ん、んっ」
噛み付くようなキスに理香の反抗が塞がれてしまう。慣れた手が腰へと回り、タイトスカート越しにふとももを撫で上げた。薄いブラウスの下でざわざわと鳥肌が立つ。それと同時に脳裏を走った甘い記憶から逃れようと、理香は必死で身をよじった。亮治の胸をひじで強く押し返し、暴力的なキスを終わらせる。五センチの距離で薄く笑う瞳を理香は睨みつけた。
「あのとき、あたしを捨てた、くせにっ!」
-つづく-
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