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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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花を召しませ-82
2006年12月09日 (土)
 気持ちを切り替えようとしたときには、もう遅かった。
「そのときはこんな安物じゃなくって、もっといいの買おうね。色はどうしようか。ピンクは美雪さんによく似合うけど、同じ色ばっかりって言うのもつまんないかなって気もするし。やっぱダイヤかな。基本だもんね」
 彼の優しい言葉に、堪えていた一線を簡単に越えてしまう。堰を切ったように一気に涙が溢れる。テーブルに次々と小さな丸い水滴の跡を作ってしまう。
「――美雪さんはどんなのがいい? ねえ、美雪さん?」
 ぽろぽろと涙が落ちてくる。どうしようもなく落ちてくる。
「美雪さん?」
 慌てた手がわたしの頬を撫でる。泣き顔を見られまいと、上を向かせようとする指に抵抗したことが逆効果だったのか、彼の声が更に上ずった。
「ど、どうしたの? こんなのイヤ?」
 動揺した声音に慌てて頭を振って、その心配が無用であることを伝えようとした。けれど彼はそれさえも反対の意味に取ったようだった。おろおろした声が続く。
「これ、気に入らなかった? ごめん、俺全然わかってなくて」
「ちが、う……違うのっ」
 普段はどちらかと言えば楽天的な彼が、どうしてこんなときだけマイナス思考なのだろうと思う。
「わたし、今まで指輪もらったことないの。初めてなの」
 ぐすぐすと啜り上げながら、手探りでカラーボックスの中のティッシュの箱を取り上げた。抜き取った一枚で目と鼻を押さえる。
「すごく嬉しい。ありがとう」
 今まで何度も泣いた。彼の前で、また彼に隠れて。それは彼を責める涙だったこともあったし、彼を信じきれない弱い自分への自己嫌悪だったこともある。そうやって泣くことに更に嫌気が差して、また泣いて。
「ありがとう、シズくん」
 こんなに幸せな涙があったなんて。

  -つづく-
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