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2006年12月08日 (金)
慌てて眼をそらしてまばたきを我慢する。このままだと泣いてしまう。
「まあこれは仮のものってことで。ちゃんとしたのはまた後日……というか、何年か先になっちゃうだろうけど。でも俺――、頑張る、から」
その言葉に息が止まった。
彼の言いたいことは明白だった。女ならば誰でも一瞬でわかることだし、男の人もそういう意味でしか使わないだろう。そういう相手にしか言わないだろう。けれど、わたしは指輪を見るのに懸命で、彼の言葉が聞こえなかった……ふりをした。
彼はわたしとは違って、まだ若い。二十三歳にもなっていないほどだ。今からそんな先のことを考える必要はないと思う。もしも彼とのことがダメになったとしても、この一年と少しの時間が全てムダだったとは、……。
ううん。多分、ムリね。
どこまでも強がろうとする自分自身に、わたしはそっと溜息をついた。
こんなに好きなのにあきらめられるはずがない。そんなこと、わかっているのに。
「ね、嵌めてみて。――あ、いや、俺が嵌めてあげる」
おどけた口調で言うと、彼はわたしの手の中から指輪を取り上げた。わたしの左手を取ると、それを薬指にゆっくりと差し込む。意外なほど引っかかりもなく、指輪はするすると入って行く。根元にピンクのハートをひとつ飾っただけで、爪の短い子どものような手が急に華やいで見えた。
「んー、ちょっと緩い、かな。美雪さんならこれくらいだと思ったんだけど」
指輪を左右に揺らしながら彼は困ったように言う。確かに、ぴったりと言うには少しぐらつく感じがするけれど、でも指には関節があるのだから、いきなりすっぽりと抜けてしまうことはないだろう。
「ちょっとくらい動いちゃうかもしれないけど、でも大丈夫だと思う」
「そっか、そうだね」
考え込むような仕草をしながら、彼は小さく頷いた。
「次は一緒に行って、サイズ合わせようね。美雪さんが気に入ったものが一番だし、やっぱそういうの買ってあげたいし」
――せっかく、さっき聞こえないふりをしたのに。
-つづく-
「まあこれは仮のものってことで。ちゃんとしたのはまた後日……というか、何年か先になっちゃうだろうけど。でも俺――、頑張る、から」
その言葉に息が止まった。
彼の言いたいことは明白だった。女ならば誰でも一瞬でわかることだし、男の人もそういう意味でしか使わないだろう。そういう相手にしか言わないだろう。けれど、わたしは指輪を見るのに懸命で、彼の言葉が聞こえなかった……ふりをした。
彼はわたしとは違って、まだ若い。二十三歳にもなっていないほどだ。今からそんな先のことを考える必要はないと思う。もしも彼とのことがダメになったとしても、この一年と少しの時間が全てムダだったとは、……。
ううん。多分、ムリね。
どこまでも強がろうとする自分自身に、わたしはそっと溜息をついた。
こんなに好きなのにあきらめられるはずがない。そんなこと、わかっているのに。
「ね、嵌めてみて。――あ、いや、俺が嵌めてあげる」
おどけた口調で言うと、彼はわたしの手の中から指輪を取り上げた。わたしの左手を取ると、それを薬指にゆっくりと差し込む。意外なほど引っかかりもなく、指輪はするすると入って行く。根元にピンクのハートをひとつ飾っただけで、爪の短い子どものような手が急に華やいで見えた。
「んー、ちょっと緩い、かな。美雪さんならこれくらいだと思ったんだけど」
指輪を左右に揺らしながら彼は困ったように言う。確かに、ぴったりと言うには少しぐらつく感じがするけれど、でも指には関節があるのだから、いきなりすっぽりと抜けてしまうことはないだろう。
「ちょっとくらい動いちゃうかもしれないけど、でも大丈夫だと思う」
「そっか、そうだね」
考え込むような仕草をしながら、彼は小さく頷いた。
「次は一緒に行って、サイズ合わせようね。美雪さんが気に入ったものが一番だし、やっぱそういうの買ってあげたいし」
――せっかく、さっき聞こえないふりをしたのに。
-つづく-
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