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R18 らぶえっち小説Blog
えっちな表現が盛りだくさんにつき、18歳未満&清純派さん回れ右!
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花を召しませ-58
2006年11月06日 (月)
「どうなってんのって、そんないきなり言われても……」
 投げつけるような直球攻撃に眠気も一気に吹き飛んだけれど、眠かろうが眠くなかろうが、言いづらいことであるのは確かだ。言いよどみながら一番正解に近い言葉を探るが、それでもなかなか出てこない。
「あのね、わたしにもよく……わかんないんだけど」
 困りながらもそう告げてから、それが正しいのだとようやくわかる。そうだ。わたしはよくわかっていないのだ。
 彼がホストをしていたことをとやかく言うつもりは毛頭ない。人にはそれぞれ歩いてきた道があって、それが他人から見てどういう状況であれ、過去となった時点で本人にさえもどうすることもできないものになってしまうのだから。
 そして、彼とわたしがセックスをしてしまったことも問題はない。
 わたしは彼が好きで、彼もわたしを好きだと思ってくれていたのだから、それなりの年齢の男女が好き合えばそういう行為に及ぶのはごく自然なことだろう。わたしに経験がなかったことで、その過程が少々間延びしたのだけれど。
 彼の家庭環境もその苦しみに対する彼の行為も、他人であるわたしが口を出すことではない。
 ただ、問題は。
『俺、あの人に金で飼われてんの』
 楽しげで悲しげで、そしてなによりも自分を蔑むようなあのまなざしが、未だに咀嚼されないまま心の入り口に引っかかっていた。噛むことさえできないのだから、当然飲み込めない。指先に刺さったとげのようにいつまでもちくちくと痛みを伝えてくる。
「本当に……わからないの」
 あの日わたしは、何も言わずに服を着て、そのままホテルを出た。彼は追ってこなかった。だから地下鉄に乗って家に帰った。帰り着いたアパートの狭いお風呂場でシャワーを浴びて、一人で眠った。朝起きて、見覚えのある名前がずらりと並んだケータイの着信履歴に、嬉しいと思いながらもうろたえた。掛け直すことも掛かってきた電話に出ることもできず、聞こえない振りで通した。
 彼を軽蔑できたら楽でいいのにと思う。バカな男に処女を捧げたと怒ればいい。もう二度と掛けてこないでと言ってしまえばいい。
 それができない理由はただ一つ。
「あのさあ、あたしだってわかってんのよ。恋愛なんて他人がとやかく言うもんじゃないって。あんたにはあんたの言い分があるだろうし、それが正しいかどうかなんて、あんたにしかわかんないんだから。――でも、ね」
 彼女がふうっと大きく息を吐いた音が、ノイズ混じりの中、奇妙なほどクリアに聞こえた。
「でもシズが……ちょっと見てらんないのよ」

  -つづく-
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