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2006年10月28日 (土)
誇らしげな過去ならばともかく、聞くほうがためらってしまうような過去など、話すほうも嫌だろうと思う。それが恋愛関係にある男女ならばなおさらだ。男性は、自分の弱みはできるだけ見せたくないと考えるものなのではないだろうか。だから、これは彼の誠意だ。わたしはそう理解しようとしていた。
「美雪さんは、他にも訊きたいことあるんじゃないの?」
そう笑う彼の態度はいつもと変わりなかったけれど、唇の端がほんの少し震えていた。けれど、彼以上にわたしは動揺しているのだと思う。さっきから、自分の声が妙に遠くに聞こえる。世界が揺れているような気がするけれど、おそらくこれは地震などではなく、眩暈のせいだろう。意味もなく自分を詳しく分析しながら、黙って彼を見つめた。
「んっと、美雪さんはあれでしょ。こないだの電話の、あの人のことが気になってんでしょ。納得した振りしながらずっと疑ってたもんね」
ちらりと横目でわたしを見ながら、彼は大きく煙を吐く。
ここで彼を信じていると言い張るべきなのか、それとも頷いてもいいのか。信じていないわけではないけれど、でも全てを信じていたわけでもない。けれど、それを言ってもいいのだろうか。それとも、言わない方がいいのだろうか。そんな一瞬の交錯する意識に思わず停止したわたしに、彼は軽く吹き出した。
「ホント、美雪さんって素直だな。嘘ついたことないんじゃないの」
あははと声を立てて笑うと、彼は長くなったタバコの灰を落とさないようにそっと灰皿に置いた。頭の上に手を伸ばすと、そのままゆっくりと背伸びをする。胸をそらして大きく腕を突き上げて、そして彼はあっさりと言った。
「でも、ま、それ正解」
ふわっとあくびのような息を吐き出すと彼は薄く笑った。
「あの人ね、俺のパトロン」
パトロン……?
「俺、あの人に金で飼われてんの」
彼の口から出た言葉が皮肉げなその笑みが、信じられなかった。
-つづく-
「美雪さんは、他にも訊きたいことあるんじゃないの?」
そう笑う彼の態度はいつもと変わりなかったけれど、唇の端がほんの少し震えていた。けれど、彼以上にわたしは動揺しているのだと思う。さっきから、自分の声が妙に遠くに聞こえる。世界が揺れているような気がするけれど、おそらくこれは地震などではなく、眩暈のせいだろう。意味もなく自分を詳しく分析しながら、黙って彼を見つめた。
「んっと、美雪さんはあれでしょ。こないだの電話の、あの人のことが気になってんでしょ。納得した振りしながらずっと疑ってたもんね」
ちらりと横目でわたしを見ながら、彼は大きく煙を吐く。
ここで彼を信じていると言い張るべきなのか、それとも頷いてもいいのか。信じていないわけではないけれど、でも全てを信じていたわけでもない。けれど、それを言ってもいいのだろうか。それとも、言わない方がいいのだろうか。そんな一瞬の交錯する意識に思わず停止したわたしに、彼は軽く吹き出した。
「ホント、美雪さんって素直だな。嘘ついたことないんじゃないの」
あははと声を立てて笑うと、彼は長くなったタバコの灰を落とさないようにそっと灰皿に置いた。頭の上に手を伸ばすと、そのままゆっくりと背伸びをする。胸をそらして大きく腕を突き上げて、そして彼はあっさりと言った。
「でも、ま、それ正解」
ふわっとあくびのような息を吐き出すと彼は薄く笑った。
「あの人ね、俺のパトロン」
パトロン……?
「俺、あの人に金で飼われてんの」
彼の口から出た言葉が皮肉げなその笑みが、信じられなかった。
-つづく-
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