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2006年10月23日 (月)
「俺の噂って、聞いたこと、ある?」
曖昧な笑みを浮かべながら彼は指先で自分の唇を拭った。
彼のそういう仕草には見覚えがあった。おそらくはタバコが欲しいと考えているのだろうと思う。ヘビースモーカというほどではないけれど、彼はどちらかというと喫煙量が多い。どういうきっかけでタバコを吸うようになったのだろうか。問いかけられた言葉とは全く違うことを考えながら、わたしは小さく頷いた。
「ちょっとだけ」
具体的に教えてと返されて、有理に少し聞いたのだと答えると、彼は溜息をつきながらゆっくりと起き上がった。
「あー、有理さんか。じゃあ、まだよかった」
ベッドから身を乗り出すように手を伸ばして床に落ちていたジーンズを拾い上げると、彼はポケットからタバコを取り出した。ベッドの脇にあった灰皿と、その上のホテル名の入った使いきりタイプのライターを引き寄せて、咥えた先に火を点す。
「よかった?」
「うん。あの人ならオーナー経由の話でしょ。だったら根も葉もないことは言わないかなって。まあ俺の場合、事実だけでも充分なんだけどね。だから尾ひれがつくとどうしようもないってカンジで。そういうのは嫌だし」
美雪さんにそう思われるのはね、さすがにちょっと。
クスクス笑いながら白い煙を吐き出すと、彼は黙った。その目も口元も笑っているのに、なぜか泣いているように見える。俯いた横顔と丸まった背中がとても……寂しそうで。
「美雪さんさ、『枕ホスト』って聞いたことある?」
黙ったままタバコを半分ほど吸って、そして彼はひどく静かな声を出した。
――枕ホスト?
突然出てきた知らない言葉に首を傾げると、彼は眼を細めた。
-つづく-
曖昧な笑みを浮かべながら彼は指先で自分の唇を拭った。
彼のそういう仕草には見覚えがあった。おそらくはタバコが欲しいと考えているのだろうと思う。ヘビースモーカというほどではないけれど、彼はどちらかというと喫煙量が多い。どういうきっかけでタバコを吸うようになったのだろうか。問いかけられた言葉とは全く違うことを考えながら、わたしは小さく頷いた。
「ちょっとだけ」
具体的に教えてと返されて、有理に少し聞いたのだと答えると、彼は溜息をつきながらゆっくりと起き上がった。
「あー、有理さんか。じゃあ、まだよかった」
ベッドから身を乗り出すように手を伸ばして床に落ちていたジーンズを拾い上げると、彼はポケットからタバコを取り出した。ベッドの脇にあった灰皿と、その上のホテル名の入った使いきりタイプのライターを引き寄せて、咥えた先に火を点す。
「よかった?」
「うん。あの人ならオーナー経由の話でしょ。だったら根も葉もないことは言わないかなって。まあ俺の場合、事実だけでも充分なんだけどね。だから尾ひれがつくとどうしようもないってカンジで。そういうのは嫌だし」
美雪さんにそう思われるのはね、さすがにちょっと。
クスクス笑いながら白い煙を吐き出すと、彼は黙った。その目も口元も笑っているのに、なぜか泣いているように見える。俯いた横顔と丸まった背中がとても……寂しそうで。
「美雪さんさ、『枕ホスト』って聞いたことある?」
黙ったままタバコを半分ほど吸って、そして彼はひどく静かな声を出した。
――枕ホスト?
突然出てきた知らない言葉に首を傾げると、彼は眼を細めた。
-つづく-
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