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2006年09月15日 (金)
「あーっ、見つけた! 美雪っ!」
どこかから聞こえてきた声にスツゥールに座ったまま首を巡らす。思ったよりすぐそばに見慣れた顔があった。
「有理」
わたしより少しは背が高いとは言えそれでもさして長身ではない彼女は、人ごみのあいだを見え隠れしながら、半円の階段を上がってくる。それを斜め上から見おろしながら、グラスに口をつけた。
「お疲れー」
「なによ、優雅じゃん」
さっきまでフロアで踊っていたのか、わずかに息を乱しながら彼女は左隣に座った。
「いらっしゃいませ」
「あたし、カンパリソーダ」
出迎えたシズくんにそう言いながら、彼女は黒地に白で店名の入ったチケットをカウンタに置いた。それを受け取って、彼は軽い笑顔を見せながら頷いた。ひじまでシャツをめくった腕が手早く動く。カランと音を立ててグラスに大き目の氷が三つ入って、お酒の瓶が傾いて、少しいびつな氷の表面に濃い紅色の液体が流れた。次いで、冷蔵庫から取り出したソーダの丸っこい瓶が細かな泡を立てながらグラスに注がれる。細くて綺麗な指が全体をカラカラとかき混ぜるのを、わたしはじっと見つめていた。
いつも思うことだけれど、注文を受けるときの少しはにかんだような笑顔と、お酒を作っている様子は、何度見ても飽きない。できるならば、いつまでも見ていたい。
「なあにー? 見とれちゃってるー?」
「え? そ、そんなこと……」
隣から脇腹を突付かれて慌てた。やめてよとその手を押さえると、彼女はわずかに眉をひそめた。わたしにしか聞こえない小声と一緒に、探るような視線が向けられる。
「美雪さ、彼と付き合ってるって、ホント?」
-つづく-
どこかから聞こえてきた声にスツゥールに座ったまま首を巡らす。思ったよりすぐそばに見慣れた顔があった。
「有理」
わたしより少しは背が高いとは言えそれでもさして長身ではない彼女は、人ごみのあいだを見え隠れしながら、半円の階段を上がってくる。それを斜め上から見おろしながら、グラスに口をつけた。
「お疲れー」
「なによ、優雅じゃん」
さっきまでフロアで踊っていたのか、わずかに息を乱しながら彼女は左隣に座った。
「いらっしゃいませ」
「あたし、カンパリソーダ」
出迎えたシズくんにそう言いながら、彼女は黒地に白で店名の入ったチケットをカウンタに置いた。それを受け取って、彼は軽い笑顔を見せながら頷いた。ひじまでシャツをめくった腕が手早く動く。カランと音を立ててグラスに大き目の氷が三つ入って、お酒の瓶が傾いて、少しいびつな氷の表面に濃い紅色の液体が流れた。次いで、冷蔵庫から取り出したソーダの丸っこい瓶が細かな泡を立てながらグラスに注がれる。細くて綺麗な指が全体をカラカラとかき混ぜるのを、わたしはじっと見つめていた。
いつも思うことだけれど、注文を受けるときの少しはにかんだような笑顔と、お酒を作っている様子は、何度見ても飽きない。できるならば、いつまでも見ていたい。
「なあにー? 見とれちゃってるー?」
「え? そ、そんなこと……」
隣から脇腹を突付かれて慌てた。やめてよとその手を押さえると、彼女はわずかに眉をひそめた。わたしにしか聞こえない小声と一緒に、探るような視線が向けられる。
「美雪さ、彼と付き合ってるって、ホント?」
-つづく-
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